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2026年4月から努力義務化 高年齢労働者の労災防止措置をどう進めるか【前編】

更新日:3 日前

本記事は、企業の総務部門で安全衛生に関わる方が、厚労省の指針を現場で動かすための実務記事です。

下記2点の資料を参照し、総務部門からの視点で整理しました。

  • 令和8年2月10日厚生労働省公示「高年齢者の労働災害防止のための指針」

  • 厚生労働省労働災害防止計画(2023年4月から2028年3月まで)に基づくパンフレット「職場における心の健康づくり」


本記事では、総務部門で安全衛生に関わる方が最初の整理役となり、必要に応じて経営者、安全衛生委員会、現場責任者、産業保健スタッフ等と連携しながら進めることを想定しています。


2026年4月1日から、すべての事業所で高年齢労働者の特性を踏まえた労災防止措置が努力義務化されました。

厚労省の指針は、会社全体として何に取り組むべきかを示していますが、そのままでは「まず何を整理し、誰にどうつなげればよいか」が見えにくいことがあります。


そこで前編では、社内で何を把握するか、現場で何を確認するか、職場で何を先に直すか、という流れで整理します。



1 最初に押さえたいこと

2026年4月から、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善、作業の管理、健康状態の把握、安全衛生教育などに取り組むことが、事業者の努力義務として位置づけられました。


義務化の背景については、高年齢労働者の労働災害が多いという現状があります。

令和6年度、日本の雇用者全体に占める60歳以上の割合は19.1%である一方、労働災害による休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合は30.0%に達しています。

高年齢労働者の災害発生率は加齢に伴って上昇する傾向があり、休業見込み期間も年齢が上がるにしたがって長期化する傾向があります。


ただし、労災防止の対策は高年齢労働者だけを特別視して行うものではありません。

転倒、腰痛、つまずき、長期休業などを防ぐために、会社全体の安全衛生管理の中で進めていくものです。


まずは、次の4つを整理しておきましょう。

  • 会社として主にどの年齢層を意識して進めるか

  • 誰が中心になって進めるか

  • 現場責任者や安全衛生担当者とどう連携するか

  • 経営者や安全衛生委員会等に、どのような形で上げるか


実務では、まず60歳以上を中心に考えると整理しやすいです。高年齢者対策の統計や施策で、60歳以上が一つの目安としてよく使われていることもあります。

そのうえで、会社の人員構成や仕事内容に応じて、55歳以上や65歳以上まで視野に入れることも考えられます。


指針では、経営トップの方針表明、担当組織や担当者の明確化、安全衛生委員会等での調査審議が示されています。

まずは必要な情報を整理し、社内で動かすための土台を作るところから始めましょう。



2 基本姿勢

大切なのは、「高齢者だから危ない」「高齢者だからこの仕事は無理」と年齢で一律に考えたり、先に決めつけたりしないことです。

一人ひとりが安全に働けるように、職場の環境、仕事の流れ、休憩の取り方、教育のしかたを整える材料を集めて、社内につなぎ、展開していきましょう。


現場を回ったときに気づいたことも、見過ごさずに整理すれば、対策につなげることができます。

たとえば、次のようなことです。

  • 濡れた床をそのままにしない

  • 荷物を抱えて階段を上る作業を減らす

  • 暗い通路を明るくする

  • 注意が散りやすい作業を見直す


こうした対策は、働く方本人の注意力だけに頼るのではなく、会社の仕組みで事故を防ぐという考え方です。

まずは現場の状況を把握し、必要に応じて経営者、現場責任者、安全衛生担当者、産業保健スタッフにつないでいきましょう。



3 まず整理したいこと

まず、対象者や業務を一覧にしてみます。

  • 60歳以上の従業員

  • 夜勤がある人

  • 社用車の運転がある人

  • 高所作業がある人

  • 重い荷物を持つ人

  • 再雇用後に仕事内容が変わった人


ここで大切なのは、年齢だけを見るのではなく、どんな作業環境で、どんな仕事をしていて、どんな危険があるかをつかむことです。

同じ60歳以上でも、事務職と倉庫作業では、注意すべき点が違います。


次に、直近2年くらいの事故やヒヤリハットを見返しましょう。

特に確認したいのは、転倒、腰痛、墜落、長期休業、復職後の再発です。高年齢労働者では、転倒や無理な動作による腰痛が重要なテーマになりやすいためです。


そのうえで、自社及び他社の災害事例やヒヤリハットから危険源を洗い出し、どこから優先して取り組むかを整理することが大切です。

指針では 「リスクアセスメント(危険源の洗い出しと優先順位付け)」を求めています。

リスクアセスメントに基づき、

危険な作業の廃止・変更 → 設備や装置の改善 → マニュアルやルールの見直し → 個人用装備

の順で対策を考えてみましょう。



4 現場で最初に確認したいこと

まずは、安全衛生担当者や現場責任者と一緒に現場を見てみましょう。1か所30分ほどでもよいので、通路、階段、出入口、床、照明、荷物の置き方を写真に残しながら確認します。


特に見たいのは、次のような場所です。

  • 通路に物がはみ出していないか

  • 階段に手すりがあるか

  • 出入口に段差がないか

  • 床が濡れたり油で滑りやすくなっていないか

  • 照明が暗くないか

  • 荷物の仮置きで動線が狭くなっていないか

このような場所は、「あとで対応すればよい場所」ではなく、「今日にも事故が起きるかもしれない場所」と考えて対応します。


ここで大切なのは、自分で現場対応を完結させることではありません。

危険箇所を見つけて記録し、どの部署が対応すべきかを整理し、必要なら経営者や安全衛生委員会等に上げることが大切です。



5 職場環境で先に取り組みたいこと

高年齢労働者対策では、まず設備や作業環境の改善に取り組むことが大切です。

本人に「気をつけてください」と求める前に、会社として見直せる場所や改善できる点から先に対応します。


優先して行いたいのは、たとえば次のような対策です。

  • 段差をなくす

  • 手すりをつける

  • 通路や作業場所を明るくする

  • 床の滑り対策をする

  • 水や油をこまめに拭き取る

  • 暑い時期に休める場所を確保する


高年齢者では、視力や明暗への対応力の低下、暑さや水分不足への反応の低下にも配慮が必要です。したがって、照明、滑り対策、段差解消、休憩しやすい環境づくりは、優先して取り組みたい項目です。


すぐに工事できない場合でも、まずは、

  • 危険箇所を表示で見える化する

  • 仮置きを禁止する

  • 清掃の回数を増やす

といった方法で、できることから始めましょう。


現場から出てきた課題は、まずリスクの高さで優先順位を整理し、そのうえで、すぐ対応できるものと、予算や社内決裁を要するものに分けて進めると動かしやすくなります。



6 作業のやり方で見直したいこと

高年齢労働者の労災防止では、作業そのものも見直します。ポイントは、急がせない、迷わせない、無理な姿勢を続けさせないことです。


現場には、次のような見直しを依頼します。

  • 標準作業書を見直す

  • 作業の余裕時間を入れる

  • 安全な姿勢を明記する

  • 中断後の再開手順を決める

  • 二重チェックの場所を決める

  • 同時に複数のことをさせすぎない


重量物がある職場では、リフト、台車、荷物の小分けなども見直します。腰痛は、体力の問題だけではなく、仕事のやり方や持ち方にも大きく関係するためです。


ここでも大切なのは、作業の負担や危険がどこにあるかを整理し、現場責任者や管理職と共有して、作業方法や手順の見直しにつなげることです。

指針でも、ゆとりのある作業スピード、無理のない作業姿勢、複数作業の同時進行による負担への配慮、重量物の小口化、定期的な休憩の導入などが示されています。


現場で「どの作業が負担になっているか」「どこでミスやヒヤリハットが起きやすいか」を整理し、具体的な見直しにつなげていきましょう。



7 前編のまとめ

前編で押さえておきたいのは、次の3点です。

  • 年齢だけで一律に判断しないこと

  • まず現場を見て、どこに危険があるかをつかむこと

  • 本人の注意に頼る前に、職場環境や作業の進め方を見直すこと


高年齢労働者の労災防止は、本人任せでは進みません。

転びにくい職場、無理をしにくい作業に変えていくためには、まず現場の課題を整理し、社内で共有し、必要な対策につなげていくことが大切です。


指針では、対策は一度行って終わりではなく、「年間推進計画を作り、一定期間ごとに評価し、必要な改善を行うこと」が望ましいとされています。



次回の後編では、前編で整理した内容を出発点にして、健康管理やメンタルヘルス、個別対応まで含めた進め方を見ていきます。

高年齢労働者の労災防止は、制度を知るだけでなく、実際の職場の動線、作業内容、人員配置、年齢構成に合わせて、自社に合った進め方を考えることが大切です。


当事務所では、ヒアリングや必要に応じたアンケート等を通じて、各社ごとの課題や優先順位を整理し、現場の実情に合った対応策をご一緒に検討いたします。




 
 
 

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