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高年齢労働者の労災防止措置 健康管理・認知面への配慮・メンタルヘルス【後編①】

前編では、まず整理したいこと、現場で確認すること、職場で先に取り組みたいことを見てきました。

後編①では、健康管理、認知面への配慮、メンタルヘルスといった取組を整理します。


高年齢労働者の労災防止は、職場環境の改善だけで完結するものではありません。

健康状態や体力の把握、その状況に応じた就業上の配慮、相談しやすい体制づくり、教育、定期的な見直しまで含めて進めていくことが大切です。



8 健康管理で大切なこと

健康診断は、受けてもらって終わりにしないことが大切です。

大事なのは、健診結果を見て、必要な就業上の配慮につなげること です。


基本の流れとして、まず次の点を確実に進めましょう。

  • 雇入時健診、定期健診を確実に実施する

  • 所見がある人は、産業医の意見を確認する

  • 必要に応じて、作業内容の変更、勤務時間の短縮、配置の見直しを行う


指針でも、健康診断を確実に実施することに加え、高年齢労働者自身が自分の健康状態を把握できるようにすること が望ましいとされています。


結果を通知するだけで終わらせず、必要に応じて産業医や保健師につなぎ、何に気をつけるべきか、どのような配慮が必要かを確認したうえで、実際の就業上の配慮につなげていくことが大切です。 また、体力チェックを取り入れる場合も、結果を評価やふるい分けのために使うのではなく、その人に合った作業や必要な配慮を考えるために活用することが大切です。


「体力チェック」について指針では、フレイルチェック、転倒リスクを確認する身体機能セルフチェック、オンラインツールや質問紙による把握、事業場の作業内容に合わせた確認方法などが例として示されています。


「体力チェック」で見つかった課題に基づき、夜勤を外す、長時間立ちっぱなしの作業を減らす、補助者をつけるといった配慮につなげていきます。


このとき意識しておきたいのは、次の点です。

  • 体力チェックの目的を、本人に丁寧に説明すること

  • 本人の同意をどのように取るかを決めておくこと

  • 結果について、誰がどこまで見るかを整理しておくこと

  • 不利益な取扱いにつながらないよう、社内ルールを確認しておくこと


必要があれば、安全衛生委員会等で運用ルールを確認しておくと安心です。

健康情報や体力の状況は、広く集めればよいものではなく、必要な範囲で、丁寧に取り扱うこと が大切です。



9 認知面への配慮で気をつけたいこと

高年齢労働者の安全対策というと、筋力や体力のことをイメージしがちですが、

実際には

「注意を払い続ける」

「複数のことを同時にこなす」

「その場で優先順位を判断する」といった負担にも目を向けることが大切です。


指針でも、高年齢者の特性を踏まえた作業管理として、注意力や集中力を必要とする作業について作業時間を考慮すること複数の作業を同時進行させる場合の負担や、優先順位の判断を伴う作業の負担に配慮すること が示されています。


ここで大切なのは、認知機能を評価したり検査したりすることではなく、仕事の進め方を見直して、確認漏れや判断ミスが起きにくい流れにすること です。


たとえば、次のような工夫が考えられます。

  • チェックリストを使う

  • 重要な確認は二重チェックにする

  • 同時並行作業を減らす

  • 中断した作業を再開しやすい手順にする

  • 一人に複数の判断が集中しないようにする


現場から

「最近、確認漏れが増えている」

「一人に複数の判断が集中している」

「急な割込みが多く、作業が中断しやすい」

といった声が出てきたら、まずはその作業の流れを整理してみましょう。


大切なのは、本人の注意力だけに頼るのではなく、どの作業に負担が集中しているか、どこで判断ミスが起きやすいかを見える形にして、現場責任者や管理職と共有し、作業の進め方そのものを見直すこと です。



10 メンタルヘルスで大切なこと

高年齢労働者の労災防止では、メンタルヘルスも大切です。

眠れない、疲れが取れない、気分が落ち込む、仕事への不安が強い。こうした状態は、転倒、判断ミス、長期休業、復職後の再発 につながることがあります。


そのため、メンタルヘルスは別の課題として切り離すのではなく、高年齢労働者が安全に働き続けるための基盤 として考えることが大切です。


厚労省の『職場における心の健康づくり』では、メンタルヘルス対策は場当たり的に行うのではなく、「心の健康づくり計画を作り、継続的・計画的に進めること」が重要とされています。


また、指針でも、高年齢者が不調や働きにくさを相談できるよう、相談窓口の整備や、何でも話しやすい職場風土づくりが有効 と示されています。


対策は、次の流れで考えると整理しやすくなります。

  • 一次予防:不調になる前に、職場環境や仕事の進め方を見直す

  • 二次予防:不調のサインに早く気づき、早めに相談や支援につなぐ

  • 三次予防:休業した人の職場復帰を支え、再発を防ぐ


つまり、相談窓口だけ作ればよいのではなく、予防、早期対応、復職支援までを一つの流れで整えること が必要です。


社内で整えておきたいことは、たとえば次のような内容です。

  • 心の健康づくり計画や社内ルールを整える

  • 相談窓口を明確にする

  • 誰に相談できるかを周知する

  • 相談内容をむやみに広げないルールを決める

  • 管理職にラインケアの教育をする

  • 本人向けにセルフケアの案内をする


ここで大切なのは、専門的な判断を一人で行うことではありません。

不調のサインを拾いやすい仕組みを作ること、相談を適切な相手につなぐこと、個人情報保護のルールを整えることが大切です。


また、心の健康は、本人の性格や体調だけで決まるものではありません。

配置転換、仕事量の偏り、役割の変化、職場での人間関係など、会社の働かせ方や職場の状況も大きく影響します。

そのため、メンタルヘルスは個人の問題として切り離すのではなく、人事労務管理や職場環境の見直しとあわせて考えることが大切です。


現場で「最近、表情が暗い」「口数が減った」「ミスが増えた」「疲れている様子が続いている」といった変化が見られたときは、本人任せにせず、まずは相談しやすい形で声をかけ、必要に応じて産業医や外部相談先につなげていきましょう。

高年齢労働者の労災防止では、こうした小さな変化を見過ごさず、安全面の課題として早めに拾うこと が大切です。



11 4つのケアで整理する

メンタルヘルス対策は、誰か一人が抱えて進めるものではありません。

厚労省の手引書では、4つのケアを組み合わせて進めること が重要とされています。


4つのケアとは、次のことです。

  • セルフケア

    本人が、自分の疲れや不眠、気分の落ち込み、ストレスに気づき、早めに相談したり、休養や受診につなげたりすること


  • ラインによるケア

    上司や管理監督者が、部下の変化に気づき、相談しやすい雰囲気をつくり、必要に応じて適切な相手につなぐこと


  • 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

    産業医、保健師、衛生管理者、人事労務担当者などが連携し、相談対応や就業上の配慮、職場復帰支援などを行うこと


  • 事業場外資源によるケア

    外部の相談機関、産業保健総合支援センター、地域産業保健センターなどを活用すること


この4つは、それぞれを別々に考えるのではなく、

本人が気づき、上司が変化を拾い、社内の担当者や産業保健スタッフが支え、必要に応じて外部機関にもつなぐ流れ をつくることが大切です。


総務部門で安全衛生に関わる方は、この4つのケアのつなぎ役 になります。

  • 相談窓口をわかりやすくする

  • 誰がどの役割を担うかを整理する

  • 相談内容の取扱ルールを整える

  • 産業医や外部機関につなぐ流れを決めておく

といった形で、社内の仕組みを整えておくことが大切です。



高年齢労働者の労災防止では、職場環境を整えるだけでなく、健康状態や体力、注意・判断の負担、メンタルヘルスにも目を向けることが大切です。


不調や負担を本人任せにせず、社内で気づき、支え、必要な配慮につなげていくことが、安心して働き続けられる職場づくりにつながります。


次回の後編②では、こうした視点をふまえて、個別対応、教育、事故後の対応、月次・年次の見直しをどう進めるかを整理します。




 
 
 

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