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高年齢労働者の労災防止措置 個別対応・教育・見直しの進め方【後編②】

後編①では、健康管理、認知面への配慮、メンタルヘルスなど、高年齢労働者の心身の状態をどう支えるかを見てきました。


後編②では、その内容を実際の職場運営につなげるために、個別対応、教育、事故が起きたときの対応、月次・年次の見直しについて整理します。



12 個別対応が必要なとき

高年齢労働者の安全対策は、全員に同じことをすれば足りるとは限りません。足腰に不安がある人、夜勤が負担になっている人、不眠や不安を抱えている人、病気やけがから復帰した人では、必要な配慮が違います。


そういうときは、個別支援計画や面談記録を使って、何に困っているのか、どの作業が負担になっているのか、何を変えれば安全に働けるのか を整理します。


たとえば、次のような配慮が考えられます。

  • 夜勤を外す

  • 長時間の立ち仕事を減らす

  • 階段の上り下りが多い仕事を見直す

  • 重量物を持つ回数を減らす

  • 休憩をこまめに入れる

  • 作業内容や勤務時間を見直す


指針でも、健康や体力の状況を踏まえて、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少、作業の転換 などの措置を講じることが示されています。


また、個々の状況に応じて、安全と健康の観点から適した業務を考え、継続して働けるよう配慮することが大切とされています。


ここで大切なのは、必要な範囲だけを確認し、健康情報を広く集めすぎないことです。

また就業上の措置は、本人の状況を確認しながら十分に話し合って進めること が大切です。

健康管理部門と人事労務管理部門が連携し、必要に応じて産業医等の意見も踏まえながら、無理のない対応につなげていきましょう。


なお、何らかの疾病を抱えながら働き続けることを希望する場合には、治療と就業の両立支援の視点も重要になります。

高年齢労働者の個別対応は、単に業務を軽くするかどうかではなく、安全に働き続けられる形を一緒に考えること が基本になります。



13 教育で意識したいこと

高年齢労働者の労災防止では、本人への教育だけでなく、管理職、指導担当者、人事労務担当者が、それぞれの役割を理解して動けるようにすることが大切です。


教育は、一度説明して終わりではなく、理解しやすい形で繰り返し伝え、実際の行動につなげること を意識したいところです。


本人向けには、たとえば次のような内容を伝えます。

  • 転倒しやすい場所や動作に気をつけること

  • 腰に負担がかかりやすい姿勢や持ち方を知ること

  • 疲れや不安を我慢せず、早めに相談すること

  • 作業手順や安全ルールを改めて確認すること

  • 自分の体力や体調の変化に気づくこと


その際は、文字だけで説明するのではなく、写真、図、映像なども使い、十分な時間をかけて理解しやすく伝えること が望ましいとされています。

特に、再雇用や再就職で未経験の仕事に就く場合は、より丁寧な教育が必要です。


また、転倒災害は、危険に見えない場所でも起きます。

そのため、高年齢労働者本人には、わずかな段差や濡れた床、荷物の仮置き、軽く見える作業でも事故につながることがあると、具体例を交えて伝えることが大切です。


管理職や指導担当者には、次のような点を共有しておきましょう。

  • 高年齢労働者の特性を理解すること

  • 急がせる指示や無理な作業を避けること

  • 不調のサインに早めに気づくこと

  • 相談を受けたときに、社内の労務担当や産業保健スタッフ等につなぐこと

  • 役割や配置の変化が心身の負担になることを理解すること


大切なのは、本人に伝える内容と、管理職や指導担当者に共有しておきたい内容を整理し、計画的に実施していくことです。

前編で見た現場の危険箇所や、健康管理・個別対応で見えてきた課題も踏まえて、教育内容を見直していきましょう。



14 事故が起きたときの流れ

事故が起きたときは、その場の対応だけで終わらせず、応急対応、報告、被災者支援、原因分析、再発防止までを一つの流れとして進めること が大切です。

その場を収めて終わりにすると、同じような事故が繰り返されるおそれがあります。


大切なのは、事故の原因を本人の不注意だけで終わらせないことです。

事故後は、けがの程度や経過だけでなく、

  • どこで起きたのか

  • 何をしているときだったのか

  • 床や段差、照明、作業動線に問題がなかったか

  • 無理な作業姿勢や急がせる段取りがなかったか

  • 事前の教育や周知が十分だったか

といった点も整理しておきましょう。


また、労働者死傷病報告や労災保険の案内が必要になる場合に備えて、事故が起きたときに誰が何を行うか をあらかじめ社内で決めておくと安心です。

慌ててその都度判断するのではなく、社内フローとして文書化しておくと動きやすくなります。


社内で安全衛生に関わる方は、事故後に必要な情報を集め、再発防止の検討に必要な材料を整理して、現場責任者や安全衛生委員会等につなぐ役割を担います。


事故対応を一度きりで終わらせず、次の改善につなげることが大切です。



15 月次・年次で見直す

高年齢労働者の労災防止は、一度対策を決めて終わりではありません。

日々の状況の変化を見ながら、月ごとに確認し、年ごとに振り返って見直していくこと が大切です。


<月次で確認したいこと>

たとえば、次のような点で、現場の変化や対応漏れがないかを確認します。

  • 60歳以上の従業員の配置に変化がないか

  • 夜勤、運転、高所、重量物作業に偏りがないか

  • 転倒、腰痛、ヒヤリハットが増えていないか

  • 通路、床、照明などの危険箇所が放置されていないか

  • 健診後の就業上措置が実施されているか

  • 相談が来ているのに対応待ちになっていないか

  • 個別配慮をしている人の状況が変わっていないか


月次確認の目的は、小さな変化を見逃さないこと です。件数だけを見るのではなく、「どこで」「どんな場面で」「誰に」「何が起きているか」を見ていくことが大切です。


<年次で確認したいこと>

年に1回は、会社全体として取組を振り返ります。

指針でも、年間推進計画を作り、その計画に沿って進め、一定期間ごとに評価し、必要な改善を行うこと が望ましいとされています。


たとえば、次のような項目を確認します。

  • 対象者の定義と一覧の見直し

  • 労災、ヒヤリハット、休業、復職状況の集計

  • 現場点検の実施

  • 設備面の改善確認

  • 作業手順書の見直し

  • 教育の実施状況確認

  • 相談体制の見直し

  • 個別支援計画の棚卸し

  • 年間推進計画の評価と次年度課題の決定


ここで大切なのは、対策を「やったかどうか」だけで終わらせないことです。

実際に事故が減ったか、ヒヤリハットの傾向が変わったか、現場で無理のある働き方が残っていないか まで振り返り、次の改善につなげていきましょう。


月次や年次の確認で見えてきた内容を整理し、現場責任者、安全衛生委員会、経営者など、必要な場で共有できる形にしていきましょう。

継続して見直せる仕組みをつくることが、労災防止の定着につながります。



16 後編のまとめ

高年齢労働者の労災防止で大切にしたいのは、次の考え方です。

  • 本人の注意力だけに頼らない

  • 健康管理は、健診を受けて終わりにせず、就業上の配慮までつなげること

  • メンタルヘルスは、予防、早期対応、復職支援まで一連で考えること

  • 必要な配慮は、一律ではなく、本人の状況に応じて考えること

  • 月次・年次で見直しを続け、改善につなげること


高年齢労働者の労災防止は、職場環境の整備だけでなく、健康管理、メンタルヘルス、個別対応、教育まで含めて考えることが大切です。

また、制度を知るだけでなく、実際の職場の動線、作業内容、人員配置、年齢構成、健康面の課題を踏まえて考えることが必要です。


今後の労働力人口の減少を踏まえて、高年齢労働者が無理なく働き続けられる形を会社として整えていくことが求められています。


社内で安全衛生に関わる方にとって大切なのは、現場で起きていることを整理し、必要に応じて経営者、安全衛生委員会、現場責任者、産業保健スタッフ等につなぎながら、継続して見直せる流れをつくっていくことです。


社内で整理し進めていくことが基本ですが、進め方に迷う場合や、就業上の配慮、社内ルール、運用の整理が必要な場合には、外部の視点を入れて考える方法もあります。


厚⽣労働省は、ヒヤリハット事例の収集や、中央労働災害防⽌協会の「エイジアクション100」などの チェックリスト活⽤を推奨しています 。


公的な相談窓口には、都道府県の産業保健総合支援センターのほか、事業場の規模によっては地域産業保健センターなどがあります。


また、当事務所でも規程類の整備などを通じてお手伝いできますので、お気軽にご相談ください。





 
 
 

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