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キャリアアップ助成金(正社員化コース)の実務解説|申請前に確認したい要件と注意点

更新日:5月6日

神奈川県平塚市の社会保険労務士事務所「メグミ労務ラボ」です。


この記事では、キャリアアップ助成金(正社員化コース)について、申請前に確認しておきたい要件や注意点を解説します。 厚生労働省が公表している下記資料もあわせてご参照ください。


・キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(パンフレット)


・キャリアアップ助成金(正社員化コース)のご案内(リーフレット)








■キャリアアップ助成金の「正社員化コース」とは?

非正規雇用労働者を正社員に転換し、転換前よりも賃金を3%以上増加させた場合に助成されます。

非正規雇用労働者とは、有期雇用、パートタイマー、契約社員、派遣労働者などをいいます。



■助成金の金額

重点支援対象者に該当するかどうかで金額が変わります。

助成額は「正社員転換前の雇用形態」「企業規模」「重点支援対象者に該当するか」で変わります。






■重点支援対象者について補足

重点支援対象者に該当する場合は、2期目の申請が可能となり、それ以外の場合の2倍の受給額になります。

要件は、リーフレットを参照してください。


  • 「雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者」は、無期雇用労働者とみなし、重点支援対象者には該当しません。


  • 雇い入れ日の前日までの雇用状況の証明のため、対象労働者に"署名"と"連絡先の記入"を「確認票」にしていただき、提出する必要があります。


  • 母子家庭の母または父子家庭の父であることの証明のため、"確認できる証明書"または"申立書"を提出します。

    よって、対象労働者に証明書類の提供または申立書への署名を依頼する必要があります。


  • 派遣労働者を直接雇用した証明のため、労働者派遣契約書の写し、派遣先管理台帳、直接雇用前の賃金が確認できる書類を提出します。

    よって、社内に必要書類が整っていることや、対象労働者に派遣期間の給与明細の提供を依頼する必要があります。



■人材開発支援助成金とのダブル申請がおすすめです

「人材開発支援助成金の特定の訓練修了者」も重点支援対象者とされています。


助成金を単独で考えず、

 ①研修を受けさせる(人材開発支援助成金)

 ②正社員に転換する(キャリアアップ助成金)

という流れで、2つの助成金を組み合わせて活用することができます。

この組み合わせは厚労省パンフレットでも推奨されています。


つまり、正社員以外の労働者に、有期雇用の期間中に職業訓練(10時間以上の研修など)をしてから正社員に転換します。

すると人材開発支援助成金から職業訓練に関する助成(研修費用の75%+賃金助成1000円/時)を受けられ、さらにキャリアアップ助成金も2倍の金額で受給することができます。



■加算措置も確認しておきたいポイントです

通常の助成額に加えて、一定の取組みをした場合の加算措置があります。

下記の事項に初めて取り組む場合に、1事業所1回のみ支給されます。

忘れずに申請しましょう。


①「正社員転換制度」を新たに就業規則に規程し、実際に転換させた場合

  20万円(大企業15万円)


②「勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度」を新たに就業規則に規程し、

  実際に転換させた場合 

  40万円(大企業30万円)


【NEW】

 「非正規雇用労働者に係る情報開示」を新たに行った場合の加算額が新設されました。

  20万円(大企業15万円)


情報開示とは、自社ホームページまたは、厚生労働省が運営している「しょくばらぼ」に、正社員転換制度に関する情報を掲載することをいいます。



■よくある申請不支給 10選+α

助成金申請は、支給要件となる前提条件が多岐にわたり、一連の業務でありながら起点や意味合いの異なる期限・日付が混在します。

申請にあたっては、要件や期限を手引書で1つ1つ確認しながら、進めることが大切です。


●失敗例1:正社員定年後の嘱託社員を対象にしてしまった

制度対象外です。


●失敗例2:正社員と非正規の就業規則が区別されていない

正社員と有期雇用労働者とで、別々の就業規則が施行されていることがわかりやすくて望ましいです。

一体型も可ですが、「雇用形態」等の条文で明確に差が確認できる必要があります。


●失敗例3:有期雇用労働者に適用する就業規則の未届出

就業規則があっても、労基署への届出および従業員への周知がされていなければ、6か月以上適用されたとはみなされません。


●失敗例4:正社員転換制度の規定が転換前日までに整備されていない

有期雇用労働者に適用される就業規則に「正社員への転換制度」の記載がない場合は、最低でも転換前日までに改定し、労働基準監督署へ届け出ることが必要です。


●失敗例5:正社員と非正規の処遇差が規程で確認できない

正社員と非正規雇用とで、基本給、賞与、退職金、手当等に差があることが必要です。

また処遇の差が、それぞれに適用される就業規則で、確認できることが必要です。


●失敗例6:正社員の就業規程に「賞与または退職金」+「昇給」の記載がない

正社員に適用される就業規則には、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」についての記載が必要です。

記載がない場合は、最低でも転換前日までに就業規則を改定し、労働基準監督署へ届けすることが必要です。


  • 非正規雇用に賞与がある場合でも、正社員に賞与と退職金があり、非正規雇用には退職金がなければ、差があると言えます。


  • 正社員に退職金制度がない場合は、賞与の有無で両者の差を設けてあることが必要です。


  • 退職金制度については、社会通念上妥当な額(月3,000円以上など)の積立・規定が必要です。


●失敗例7:キャリアアップ計画書の提出を転換前にしなかった

キャリアアップ計画書は、最低でも転換日の前日までに管轄労働局長に届いていることが必要です。転換日以後の提出は不支給になります。


  • 「キャリアアップ計画書」は、転換前1か月以上前など、余裕をもって提出することが推奨されています。 


  • 人材開発支援助成金で訓練実施計画届を策定・提出した際に、追加項目を記載すれば、キャリアアップ計画書の提出を省略できます。

キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(パンフレット)P23
キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(パンフレット)P23

●失敗例8:提出済みのキャリアアップ計画書の計画期間が切れていた

2回目以降の申請の場合は、提出済みの計画書の期間を確認しましょう。

取組コースを変更した場合などは、変更届を提出する必要があります。

また、期間終了前に次の計画書を届出しておく必要があります。


●失敗例9:賃金上昇要件(手当)を就業規則へ記載し忘れた

3パーセント以上の賃金上昇の要件となる手当については、正社員用就業規則または労働協約に記載されていることが必要です。

賃金台帳や雇用契約書上に手当として記載されているだけでは、増額の根拠とは認められません。


手当の種類は会社により様々ですが、その手当てが"賃金上昇の要件"として認められるかは、下記により確認してください。

また同一労働同一賃金の観点からは、パートタイマーにその手当てが支給されない根拠を説明できることが必要です。


なお賃金比較の際に、下記の手当ては除外されますのでご注意ください。



キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)(パンフレット)P28


●失敗例10:賃金計算が規程どおりに実行されていない

正社員転換後の、基本給・手当・賞与などの規程が正社員用就業規則に定めてあり、定められた通りに実行(計算・賃金支払い)がされていることが必要です。


  • 就業規則だけでなく、賃金規定、労働条件通知書などの規程や文言も、審査に耐えうる内容に整っていることが必要です。


●+α:勤怠の端数時間の未払い

労働時間は、分単位の支払いが原則です。15分未満の時間を切り捨てる独自ルールが良く見受けられますが、助成金申請の際には指摘されやすいポイントです。

この機に勤怠管理と支払ルールについて、見直しすることをお勧めします。



■正社員転換から受給までの大まかな流れ

ステップ1

正社員と有期雇用労働者とで別々の就業規則が周知され、労働基準監督署への届け出も終わっている状態。


ステップ2

対象となる有期雇用労働者が入社。有期雇用契約としての雇用契約書の発行。


ステップ3

キャリアアップ計画書を新規作成または計画変更(コースの追加)して、管轄労働局長へ提出する。


ステップ4

管轄労働局長より、キャリアアップ計画書が認定される。(受理番号の取得)


ステップ5

対象者(有期雇用労働者)が、6か月以上雇用され、かつ「有期雇用労働者用の就業規則」が6か月以上適用される。


ステップ6

有期雇用労働者用の就業規則に「正規雇用転換制度の規定」がない場合は、正社員転換までに、就業規則の改定を行う。

入社日ではなく、賃金締め切り日で見て、完全月6か月を確保してください。


ステップ7

就業規則の規定に基づき、対象者を有期雇用労働者から正社員に転換する。

その際には、正社員後の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額する

正社員としての労働条件通知書(兼 雇用契約書)を発行する。


ステップ8

対象者を正社員として6か月雇用し、かつ「正社員用の就業規則」を6か月以上適用する。

3%以上昇給した金額で、6か月分の賃金(および賞与)を支払う。

なお、賃金比較は原則として転換前後の「完全月6か月」で行います。


ステップ9

「転換後6か月の賃金(および賞与)を支払った日」の翌日から起算して2か月以内に助成金の申請書を提出する(第1期分)


ステップ10

重点支援対象者については、さらに正社員として6か月以上雇用した場合に、第2期分の申請ができる。

「転換後12か月の賃金(および賞与)を支払った日」の翌日から起算して2か月以内に助成金の申請書を提出する(第2期分)


ステップ11

審査期間は第1期、第2期それぞれ数カ月かかります(都道府県により異なる)。

労働局担当者から、不明点の問い合わせが来る場合があるので、いつでも補正対応できるように提出書類を揃えておく。


ステップ12

労働局から支給決定通知が届く。

支給決定通知後、2週間程度で会社指定の預金口座に、助成金が振り込まれます。



■まとめ

キャリアアップ助成金は比較的取り組みやすい助成金として紹介されることが多いです。

一方で、助成金の例にもれず、申請の際には要件を理解し、さまざまな不支給になってしまうポイントを慎重に避けることが求められます。


キャリアアップ計画の提出、就業規則の整備、正社員転換のタイミングや順番を間違えないこと、賃金計算が正しくできていること、期間内に申請することなど、重要なポイントが複数あります。



■当事務所では、キャリアアップ助成金の申請をサポートしています。

  • 正社員・非正規雇用の区分整理

  …同一労働同一賃金の観点から、処遇差を整理します


  • 就業規則、賃金規定、労働条件通知書等の改定

  …助成金要件を満たすための条文案を提示し、労基署提出までサポートします。


  • 3%以上増額要件を満たす賃金シミュレーション

  …転換前後の賃金比較表を作成し、増額要件を満たす設計を確認します。


  • 勤怠・賃金台帳などの確認

  …申請に必要な帳票の不備を事前に洗い出します。


  • 人材開発支援助成金の活用を含めた育成・転換計画の設計

  …訓練計画書の作成支援を含め、併用時の最適なスケジュールを提示します。


  • 申請書一式の作成・提出サポート

  …労働局とのやり取り、補正対応まで一貫して支援します。



■ご相談のタイミング

転換前の社内準備を万全にしておくことが大切ですが、それには時間がかかります。

非正規雇用従業員について、将来的な正社員転換を検討し始めた段階で、早めにご相談いただくことをおすすめします。

助成金全般のサポート内容については、助成金ページもあわせてご覧ください。




 
 
 

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