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キャリアアップ助成金と組み合わせたい人材開発支援助成金

正社員化の前に「教育訓練」を考える理由

パート従業員や契約社員を正社員化したいと考えている会社では、正社員化の前に「教育訓練」をどう組み込むかが重要になることがあります。


キャリアアップ助成金の正社員化コースでは、対象者が「重点支援対象者」に該当するかどうかで、助成額が大きく変わります。

たとえば中小企業が有期雇用労働者等を正社員化する場合、通常は1人あたり40万円ですが、重点支援対象者に該当すると1人あたり80万円となるケースがあります。


そして、人材開発支援助成金の特定の訓練を修了したうえで正社員化した場合、この重点支援対象者に該当することがあります。


つまり、契約社員・パート社員などを将来的に正社員化したい場合は、早い段階で「誰に、どのような教育訓練を行い、いつ正社員化するのか」を設計しておくことが大切です。


次のような会社では、教育訓練と正社員化をあわせて検討する価値があります。

  • 将来、正社員化したい契約社員・パート従業員がいる

  • 人手不足のため、今いる人材を育てて長く働いてもらいたい

  • 採用してもすぐに辞めてしまうことがあり、定着に課題を感じている

  • 仕事の幅を広げたいが、社内に教育の仕組みがない

  • 正社員化後のミスマッチを防ぎたい


これらに当てはまる場合は、単に正社員化の手続きを進めるだけでなく、教育訓練の設計から確認することで、助成金の活用可能性が広がる場合があります。

1. キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の関係

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などのいわゆる非正規雇用労働者について、正社員化や処遇改善を行った場合に活用できる助成金です。

その中でも正社員化コースでは、対象者が「重点支援対象者」に該当するかどうかによって、助成額が大きく変わります。


ここで関係してくるのが、「人材開発支援助成金」です。


人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練を、計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などが助成される制度です。


つまり、「正社員化する」だけでなく、正社員化の前に教育訓練を行い、職務に必要な知識・技能を身につけてもらう流れを作ることで、キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金を組み合わせて活用できる可能性があります。

2. 正社員化と組み合わせる場合に確認したいこと

キャリアアップ助成金人材開発支援助成金を組み合わせる場合は、早い段階で「どのような訓練を行うか」「訓練後にどのような役割を期待するか」を整理しておくことが重要です。


・正社員化を予定している対象者は誰か・対象となる有期労働者の現在の業務、および現在の技能

・正社員化後の業務、および必要となる知識・技能

・訓練内容が現在または今後の職務にどのように生かせるか・訓練の時期と正社員転換の時期に無理がないか・就業規則や雇用契約書の内容と整合しているか


教育訓練と正社員化をあわせて考えることで、助成金の活用だけでなく、正社員化後のミスマッチ防止や職場定着にもつなげやすくなります。

3. 重点支援対象者に関係する人材開発支援助成金の3コース

人材開発支援助成金には複数のコースがありますが、キャリアアップ助成金の重点支援対象者となる3コースを紹介します。


3コースの共通事項として、事業主が職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を策定・周知する必要があります。これは、単発の研修を実施するだけでなく、自社の人材育成方針を整理しておくためのものです。


(1)人材開発支援助成金・人材育成支援コース

人材育成支援コースの中には、さらに4つのコースがあります。



初めて検討する場合は、「人材育成訓練」が最も取り組みやすい入口になります。

「人材育成訓練」については、後で詳しく紹介します。


(2)人材開発支援助成金・事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げなどの事業展開、企業内のDX化・GX化、または企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事する予定の職務に必要な知識・技能を習得させる場合に活用されるコースです。


このコースの対象となるのは、主に次のような訓練です。

  • 新たな分野への事業展開に必要な専門知識・技能を習得する訓練

  • 企業内のデジタル化・DX化、グリーン・カーボンニュートラル化に伴い、新たに必要となる業務知識・技能を習得する訓練

  • 企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事する予定の職務に必要となる訓練


たとえば、これまで人手で行っていた業務をデジタル化するために、従業員に新しいシステムや機器の操作を学ばせる場合などが考えられます。厚生労働省のリーフレットでも、ドローン測量を導入して業務のDX化を進める例が紹介されています。


このコースでは、訓練時間数が10時間以上であること、OFF-JTであること、職務に関連した訓練であることなどが求められます。また、職業訓練実施計画届とあわせて、「事業展開等実施計画」を提出する必要があります。

単なる一般研修ではなく、会社として今後どのような事業展開や業務転換を行うのか、そのためにどのような人材育成が必要なのかを整理しておくことが大切です。


(3)人材開発支援助成金・人への投資促進コース

人への投資促進コースは、企業における労働者の人材育成を強力に支援するため、令和4年度から令和8年度までの期間限定助成として設けられているコースです。


このコースには、次のようなメニューがあります。

  • 高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練

  • 情報技術分野認定実習併用職業訓練

  • 定額制訓練

  • 自発的職業能力開発訓練

  • 長期教育訓練休暇等制度


たとえば、DX推進に必要なITスキルを社員に体系的に学ばせるため、サブスクリプション型のeラーニング研修を導入する場合や、IT分野未経験者を即戦力化するためにOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を行う場合などが考えられます。


また、労働者が自発的に職務に関する学び直しを行う場合に、その費用の一部を会社が負担するようなケースも対象となる場合があります。


人への投資促進コースは、単に目の前の業務を教えるというより、高度デジタル人材の育成、IT分野未経験者の即戦力化、サブスクリプション型研修の活用、労働者の自発的な学び直し、教育訓練休暇制度の導入など、会社の将来を見据えた人材育成に活用しやすいコースです。

4. 人材育成支援コース「人材育成訓練」の紹介

人材育成訓練は、職務に関連した知識・技能を習得させるための、10時間以上のOFF-JTによる訓練です。

OFF-JTとは、通常の業務から離れて行う訓練のことです。


訓練の実施方法として、「通学制」、「同時双方向型の通信訓練」、「e-ラーニング」、「通信制」のいずれかとされています。


なお、通学制・同時双方向型の通信訓練と、eラーニング・通信制では、訓練時間数や受講要件、賃金助成の取扱いが異なります。

特に、eラーニング・通信制は賃金助成の対象外です。実施方法によって助成内容が変わるため、研修を選ぶ前に確認が必要です。


また、人材育成訓練であっても、研修であれば何でも対象になるわけではありません。

対象労働者の職務と訓練内容が関連しているかどうか、訓練開始前に計画届を提出できるか、訓練時間中の賃金を適正に支払えるかなど、事前に確認すべき点があります。


人材育成訓練では、主に次の2つの助成が関係します。

  • 訓練にかかる費用の一部を助成する「経費助成」

  • 訓練時間中に支払う賃金の一部を助成する「賃金助成」


助成額は、企業規模、訓練内容、訓練時間数、対象労働者の雇用区分、賃金要件・資格等手当要件を満たすかどうかなどにより変わります。


(1)経費助成率・賃金助成額

外部研修の受講料などの経費だけでなく、訓練時間中に支払う賃金についても、助成対象となります。

経費の助成率は、対象労働者の雇用区分によって異なります。


対象労働者

経費助成率

賃金助成額

(1人1時間当たり)

通常分

要件を満たす場合(①、②)

通常分

要件を満たす場合(①、②)

正規雇用

労働者等

45%

(大企業30%)

+15%

800円


(大企業

400円)

+200円


(大企業

+100円)

有期契約

労働者等

70%

+15%

※ 「①賃金要件」または「②資格等手当要件」を満たす場合、助成率や助成額が加算されます。


①賃金要件

毎月決まって支払われる賃金について、訓練終了日の翌日から起算して1年以内に5%以上増加させていることが要件です。

5%以上の増加は、対象労働者ごとに、賃金改定前後3か月間の賃金総額を比較して確認されます。


②資格等手当要件

資格等手当とは、職務に関連した資格、知識または技能を有している者に対して、毎月決まって支払われる手当をいいます。

資格等手当を就業規則、労働協約または労働契約等に規定したうえで、訓練終了日の翌日から起算して1年以内に、すべての対象労働者に資格等手当を実際に支払い、毎月決まって支払われる賃金を3%以上増加させていることが要件です。

3%以上の増加は、対象労働者ごとに、資格等手当支払い前後3か月間の賃金総額を比較して確認されます。


(2)1労働者1訓練当たりの経費助成限度額

経費助成には、訓練時間に応じて経費助成の限度があります。

例えば、中小企業で、3人の労働者に15時間の訓練をさせた場合は、経費助成限度額は45万円です。




5.人材育成訓練を実施する流れ

人材育成訓練を活用する場合は、まず、対象労働者が雇用保険被保険者であるか、訓練内容が対象労働者の職務に関連しているかを確認します。


次に、社内で職業能力開発の取組を進める担当者を「職業能力開発推進者」として選任し、自社の人材育成の基本方針を整理する「事業内職業能力開発計画」を策定して、従業員に周知します。


そのうえで、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に、「職業訓練実施計画届」と「対象労働者一覧」などの必要書類を、都道府県労働局へ提出します。


計画届を提出した後は、届け出た計画に沿って訓練を実施します。訓練内容、訓練期間、対象労働者などに変更が生じる場合は、変更届が必要になることがあります。


訓練期間中は、訓練時間中の賃金を適正に支払い、訓練の実施記録、出勤簿、賃金台帳などの書類を整えます。また、訓練経費については、支給申請日までに申請事業主が全額負担している必要があります。


訓練終了後は、支給申請の手続きを行います。正社員化と組み合わせる場合は、人材開発支援助成金側の訓練計画と、キャリアアップ助成金側の正社員転換の時期、就業規則、雇用契約書の内容が矛盾しないように確認しておくことが重要です。

6. 申請に向けて注意したいこと


「助成金対象」と案内されていても、支給が保証されるわけではありません

研修機関の案内に「人材開発支援助成金の対象になります」と書かれていることがあります。

しかし、その研修を受ければ必ず助成金が支給されるわけではありません。

助成対象になるかどうかは、訓練内容、対象労働者、職務との関連性、実際の受講状況、経費や賃金の支払い状況などをもとに、個別に判断されます。

そのため、研修を決める前に、自社の対象者や職務内容に照らして、助成対象となる訓練かどうかを確認しておくことが大切です。


訓練内容は職務に関連している必要があります

厚生労働省のパンフレットでは、職務関連訓練と判断される例として、次のようなものが挙げられています。


  • 建設業で、土木工事の現場で施工計画の作成

  • 工程管理・安全管理などを行う労働者に、土木施工管理技士の資格を取得させるための訓練

  • 情報通信業で、システム設計・開発・保守を行う労働者に、プログラミング言語やプロジェクト管理手法、セキュリティに関する知識を習得させるための訓練

  • 運輸業で、集荷、荷積・荷下ろし、配送・配達等を行う労働者に、大型自動車運転免許を取得させるための訓練

  • 福祉分野で、利用者の身体的・精神的ケア、部下の指導・育成を行う労働者に、介護福祉士実務者研修を受けさせる場合

  • 人事・労務管理における、労働関係法の法改正のポイントや、採用や人材の定着・活用に関する訓練


ただし、対象労働者の職務と訓練内容が関連するかどうかは、申請ごとに判断されます。

また、対象とならない訓練に該当する場合は助成対象となりません。


そのため、研修を決める前に、自社の対象者や職務内容に照らして、助成対象となる訓練かどうかを確認しておくことが大切です。


賃金要件・資格等手当要件の加算を検討する場合は、賃金設計も確認しましょう

人材育成訓練では、一定の賃金要件や資格等手当要件を満たす場合に、助成率や助成額が加算されることがあります。


ただし、賃金要件は、対象労働者全員の合計額で判断するのではなく、対象労働者ごとに個別に確認する必要があります。


また、資格等手当についても、一時金としての報奨金ではなく、職務に関連した資格・知識・技能に対して毎月決まって支払われる手当である必要があります。


加算を検討する場合は、訓練内容だけでなく、賃金規程や手当の設計もあわせて確認しておくことが大切です。


書類の整合性が重要です

訓練の実施記録、出勤簿、賃金台帳、経費の支払い資料など、実際に訓練を行ったことを確認できる書類を整えておく必要があります。


特に、教育訓練と正社員化を組み合わせる場合は、人材開発支援助成金側の訓練計画と、キャリアアップ助成金側の正社員転換の時期・就業規則・雇用契約書の内容が矛盾しないように確認することが重要です。


また、助成金制度は年度途中で変更されることもあるため、実際に取り組む際は、最新のパンフレットで要件を確認し、不明点は管轄労働局・ハローワークなどに確認することが大切です。

7. まとめ:正社員化の前に、教育訓練と社内制度を確認しましょう

キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金は、従業員を育て、正社員化し、職場に定着してもらうための仕組みづくりとして考えることが大切です。


  • どのような人材を育てたいのか

  • どの業務にどのような能力が必要なのか

  • 訓練後にどのような役割を期待するのか

をあらかじめ整理しておくことで、助成金のためだけでなく、実際の人材育成にも役立ちます。


特に、キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金組み合わせて正社員化を考える場合は、教育訓練を単発の研修で終わらせるのではなく、正社員化後の役割や育成方針とつなげて考えることが大切です。

教育訓練を行うことで、従業員は正社員として必要な知識や技能を身につけることができます。

会社にとっても、正社員化後のミスマッチを防ぎ、職場定着につなげやすくなります。


このような助成金の活用の際には、早い段階で教育訓練の内容や時期を検討しておく必要があります。

就業規則、雇用契約書、出勤簿、賃金台帳、訓練計画など、日頃の労務管理との整合性も重要です。


当事務所では、正社員化を予定する従業員がいる会社向けに、キャリアアップ助成金と人材開発支援助成金の組み合わせの可能性を確認し、就業規則・雇用契約書などの整備、必要な手続きやスケジュールの整理などのサポートをしています。

事前準備が大切です。早めの段階でお声がけください。


 
 
 

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